ひびの好奇心ログ

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「キッズ・オールライト」/リサ・チョロデンコ

LGBTを考える映画ではなく、実家が恋しくなるホームドラマだ!

★3.5/5

※ネタバレあり 

あらすじ

レズカップルと、その子供たちの家族ドラマ。子供たちの精子提供者に子供達が連絡を取ることから物語が始まる。それが縁で、カップルの片割れが精子提供者と浮気をしてしまい、家庭崩壊の危機‥‥?

 つい先日、70年代のゲイカップルが知的障害を持つ子供を養育する映画『チョコレートドーナツ』を観た。それに引っ張られて、LGBTものを見ようと思い立ち、思い出したのがこちら。

 

 

この映画はスマホとか映ってたし、現代が舞台だと思われるので、「チョコレートドーナツの時代から比べたら、いい時代になったんだなー」と再認識。レズ夫婦が子育てしている事に対する偏見は見る限りなく、子供たちもそのことで友達にちゃかされたりしていない。むしろレズであることは物語のメインテーマではなく、主題は家族の在り方にある。

 

主要な登場人物を軽く説明

ニック(アネット・ベニング)…医者でレズ夫婦のお父さん的な役割。一家の大黒柱。職業ゆえかかなり厳格で、批判的に物事をとらえる。短髪でファッションも男勝りな感じで、私が抱くレズ像(偏見ですね)にしっくりくる。

ジュールス(ジュリアン・ムーア)…レズ夫婦のお母さん的役割。大学で建築学を専攻していたものの、結婚を機に?家庭に入り、今は専業主婦。自分でも仕事がしたいと思っているが、なんとなくニックにいい顔をされないような気がしてひけめを感じている。

ジョニ(ミア・ワシコウスカ)…長女。18歳。ニックから生まれる。ニックの期待に応え、真面目で成績優秀に育った。ストーリー開始の1か月後に大学進学を控えている。性に関することには少し臆病。

レイザー(ジョシュ・ハッチャーソン)…長男。末っ子気質なのか結構ぽわーっとした雰囲気。薬とかやるちょっとあぶない友達がいる。自分の父親精子提供者)が誰なのか知りたいと思い、ジョニに連絡を取るよう依頼する。

ポール(マーク・ラファロ)…両母親への精子提供者。自由奔放な性格で、現在無農薬野菜を使ったレストランを経営している。これまで家庭がほしいなどとは思わなかったらしく、不特定に恋人を作ったり作らなかったりして楽しんできた。

 

 日本ではどうなのか知らないが、アメリカでは18歳になれば精子提供者を知る権利が与えられるらしい。レイザーの依頼によってジョニが精子バンク?に連絡を取り、ポールと会うことに。最初は兄弟だけの秘密だったが、結局親にばれ、みんながポールに会うことに。ポールの自由奔放な性格に触れたことで、徐々に皆の気持ちが解放され、今まで表面上は問題のなかった円満な一家にゆがみが生じ始める。兄弟はそれぞれポールとの時間を持ち始めるし、ジュールスに至っては庭仕事を依頼された彼の家で浮気を繰り返してしまう。家族をとられるのではないか、とニックが焦れば焦るほど、ドツボにはまって孤立していくのが見ていてかわいそうだった。

 

ポールの役割

 最初、自分の考え通りに突っ走り、家族を奪っていく(そんな気はないのだろうが)ポールにイライラしっぱなしだった。この男はひとつの家庭をひっかきまわして、一体どうしたいんだよ…と。しかし、そんな自由でチャーミング、自己中なんだけどどこか憎めない彼がいたからこそ、結果的に家族の絆が深まる。
 今まで好きなように生きてきたポールだが、血を分けた子供やジュールスと接するうちに、「家族っていいなモード」に突入してしまう。が、ニックは「家族がほしかったら自分で作りな!」と一蹴。まさにその通りで、家族とは一朝一夕で作れるものではないのだ。

 ジュールスがテレビの前でみんなに謝ったセリフの通り、家族って難しい。一番身近で大切な存在だからこそうっとうしく感じたり、ありがたみを忘れてイラついたりする。でも、それでもなんとか折り合いをつけて、家族の形を作りあげていく。ポールの語る物語や生き方は刺激的で面白いかもしれないが、それは一時的に魅力を感じる「生活のスパイス」でしかなく、色々乗り越えて作り上げてきた絆に代えられるものではない。ポールの存在により家庭の危機に直面し、それぞれの抱える問題や不満をさらけ出せたことで、この一家の絆はより深まった。ポールは一種のカンフル剤の役割を果たしたのだ。

 

転職活動にも通ずる二人の生き方

 こう書いていると、ポールかわいそう…と思えてくるが、ここで私は「ありとキリギリス」の童話を思い出した。ポールみたいに自分の思うままに生きるのは楽しいし、刺激的だろうけど、それと引き換えに得られないものもたくさんあるんですよ、と。

 最近私事だが、転職の機会があった。待遇、やりがい、福利厚生…など色々な条件から自分にとって重要なものを選択し、その条件に合う求人に応募する。やりがいや自身のスキルアップを求めれば、労働時間が長くなる。労働時間が短ければ、当然給料は低くなる…今後の自分の将来設計を考えながら、何を重視すればいいのかすごく考えた。

そうしたタイミングだったからこそ、ポールとニックの対照的な生き方に、感じるものがあった。どっちがいいとかではないけどね。人それぞれに重要視するものが違うのだから。

子離れの映画でもある

 ジョニは、過保護なニックの干渉から逃れたがっていた。学生寮で荷物の片づけも「一人でやるから」と断る。飲酒運転疑惑のあたりから、なんだかニックも吹っ切れた様子。

 私の初一人暮らしの時も、親があれこれ心配してきてうっとおしかったなーと思い出した。でもやっぱり独りぼっちになってみると、無性にさみしかったりするんだよね。
こうやってつかず離れず、時にはまたケンカしながらも、家族って続いていく。そんな家族っていいなー久々に実家に帰りたいなーと思わせる映画でした。ただ、性描写とか大人のおもちゃとかが色々出てくるので、家族みんなで鑑賞する映画としてはおすすめできません。笑

 レズ設定はあくまで穏便に浮気させるためであり?(相手が男だから、そこまでニックも深く傷つかない、的な)、あまり本筋とは関係ありませんでした。